竹田司法書士社会保険労務士事務所

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2022.07.24

遺言書で相続人の1人に全ての財産が遺贈された場合

遺言書の内容が相続人の1人に全ての財産を遺贈する内容だった場合、他の相続人は全く遺産を相続できないのでしょうか?

例えば、夫、妻、子の3人がいらっしゃって夫がお亡くなりになりました。夫の財産は800万円の貯金だけだったとします。この時、夫は遺言書を残していました。遺言の内容はこうです。

「私の全財産である貯金800万円を妻に遺贈する」(わかりやすく表現する為に、内容は簡略化しています)

本来の法定相続分は妻が2分の1、子が2分の1なので、法定相続分のとおりに遺産を分けると妻が400万円、子が400万円相続することになりますが、遺言の方が優先しますので、この例の場合は妻が800万円全て相続します。
すると、子は全く親の財産を相続することができません。もし、子が結婚していて、妻や子がおり生活が苦しかったとします。そんな場合、子は全く親の遺産を相続できないとなると困ってしまいます。

そこで「遺留分」というものがございます。

遺留分とは、わかりやすく申し上げますと、相続人に相続する権利を保障したものです。ですので、この例の場合、子は自分の遺留分までは遺産を相続することができます。
それでは、遺留分とは相続人にどれくらいの相続することができる権利を保障しているのでしょうか。

まず最初に自分の法定相続分の割合を計算します。ですので例の場合でいうと子の法定相続分は「2分の1」となります。その法定相続分に遺留分を乗じます。遺留分は相続人が、

①直系尊属のみの場合は「3分の1」、②それ以外は「2分の1」となります。

ですので、例の場合子は法定相続分の2分の1に遺留分2分の1を乗じて4分の1は権利として相続できます。
これを数字にあてはめますと、800万円×4分の1=200万円は子は相続できることになります。

ただし「相続人である兄弟姉妹には遺留分がない」ので注意が必要です。

相続人が夫の妻と、夫の兄のみだった場合、夫が遺言で妻に全財産を相続させると遺言書を残した場合、兄弟姉妹には遺留分がないので兄弟姉妹は全く遺産を相続できないことになります。

なお、遺留分は行使しなければならない権利ではございません。相続人の1人が遺言書により全財産を相続したとしても、他の相続人が納得しているのであればそれはそれで構わないのです。

遺留分を行使(遺留分侵害額請求権)する場合は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時、又は相続開始の日から10年が経過した時は時効によって消滅します。

カテゴリ:相続について