竹田司法書士社会保険労務士事務所

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新着情報

2022.07.25

相続人でない人が、相続財産を占有している場合

相続が起こった場合、まず最初にしなければならないことは相続人を確定するすることであり、相続人を確定することはとても重要であることは前の記事に書きました。

しかし、相続人を確定する作業はとても大変であることも前の記事に書きました。

相続登記の為に最初にすること


相続人になれる資格は①配偶者、子②直系尊属③兄弟姉妹ですが、代襲相続や遺留分、特別受益、欠格事由、排除、相続放棄などが絡んできた場合は相続人を確定し、その持分の確定をする作業はどんどん複雑になってきます。

そのようなことから、本来は相続人ではないのに相続人として相続財産を占有している人が居たらどうなるでしょうか。

例えば、夫、妻、子、夫の母の4人が親族で一つ屋根の下で生活していたとします。この場合で夫が亡くなってしまいました。遺した財産は貯金の100万円のみです。相続の仕組みを知らなければ、夫の母は「私も相続人であるのだから、息子が遺した100万円のうち、いくらか相続する権利があるはずだ」と主張してきても不思議ではありません。亡くなった夫の実の母親なのですから。しかし、法律はそうはいきません。この場合、相続人は妻と子の2人です。しかし、実際の話、妻と子が、夫の母も相続人だと思い込んで、話し合いで夫の母に100万円全額渡すかもしれません。本当に心から妻と子が、夫の母にはお世話になっているから夫の遺産の全額100万円を夫の母に渡したいのであれば、妻も子も相続放棄をするか、妻も子も夫の母に対して相続分の贈与をするべきです。

しかし、夫の母も相続人であると勘違いして、しぶしぶ夫の遺産である100万円を夫の母に100万円渡したとします。そして妻はとても生活が苦しくなり、どうして良いかわからなくなって町の無料法律相談に行きました。

「最近夫が亡くなって、とても生活がくるしくなってしまい、どうしたらよいか分からなくなって相談に来ました」
司法書士
「なるほど。お亡くなりになられた夫には遺産はなかったのでしょうか?」

「遺産は100万円の貯金があったのですが、全て夫の母が相続しました。」
司法書士
「と言いますと、お子様はいらっしゃらなかったのでしょうか?」

「いいえ。子どもは1人います。」
司法書士
「それならば、夫の母は相続人にはなりませんよ。相続人は妻と子の2人だけです。」

「え?そうなんですか!?でも、すでに夫の母に100万円渡してしまいました・・・」
司法書士
「大丈夫ですよ。相続回復請求権を行使すればいいんです。」

相続回復請求権とは自分に相続権がないのに相続権があると純粋に思い込んでいる人(善意かつ無過失)に対して行使できます。この例では妻と子は、夫の母に100万円を返還するように言えるのです。ただし、相続回復請求権には行使しなければ消滅してしまう期間があります。それは、
①相続人又は法定代理人が相続権を侵害された事実を知った日から5年
②相続開始の時から20年
です。

では、夫の母が実は自分には相続権がないと知っていた上でそれを知らないふりをして相続人になりすましていた場合はどうなるのでしょうか。
この場合、相続回復請求権が消滅することはございません。
妻と子は、所有権に基づいて、夫の母に返還請求権を行使できるからです(所有権は消滅時効にかかりません)。

※この例ではわかりやすく説明するために夫の母が悪者みたくなってしまいました。申し訳ございません。
カテゴリ:相続について
2022.07.24

遺言書で相続人の1人に全ての財産が遺贈された場合

遺言書の内容が相続人の1人に全ての財産を遺贈する内容だった場合、他の相続人は全く遺産を相続できないのでしょうか?

例えば、夫、妻、子の3人がいらっしゃって夫がお亡くなりになりました。夫の財産は800万円の貯金だけだったとします。この時、夫は遺言書を残していました。遺言の内容はこうです。

「私の全財産である貯金800万円を妻に遺贈する」(わかりやすく表現する為に、内容は簡略化しています)

本来の法定相続分は妻が2分の1、子が2分の1なので、法定相続分のとおりに遺産を分けると妻が400万円、子が400万円相続することになりますが、遺言の方が優先しますので、この例の場合は妻が800万円全て相続します。
すると、子は全く親の財産を相続することができません。もし、子が結婚していて、妻や子がおり生活が苦しかったとします。そんな場合、子は全く親の遺産を相続できないとなると困ってしまいます。

そこで「遺留分」というものがございます。

遺留分とは、わかりやすく申し上げますと、相続人に相続する権利を保障したものです。ですので、この例の場合、子は自分の遺留分までは遺産を相続することができます。
それでは、遺留分とは相続人にどれくらいの相続することができる権利を保障しているのでしょうか。

まず最初に自分の法定相続分の割合を計算します。ですので例の場合でいうと子の法定相続分は「2分の1」となります。その法定相続分に遺留分を乗じます。遺留分は相続人が、

①直系尊属のみの場合は「3分の1」、②それ以外は「2分の1」となります。

ですので、例の場合子は法定相続分の2分の1に遺留分2分の1を乗じて4分の1は権利として相続できます。
これを数字にあてはめますと、800万円×4分の1=200万円は子は相続できることになります。

ただし「相続人である兄弟姉妹には遺留分がない」ので注意が必要です。

相続人が夫の妻と、夫の兄のみだった場合、夫が遺言で妻に全財産を相続させると遺言書を残した場合、兄弟姉妹には遺留分がないので兄弟姉妹は全く遺産を相続できないことになります。

なお、遺留分は行使しなければならない権利ではございません。相続人の1人が遺言書により全財産を相続したとしても、他の相続人が納得しているのであればそれはそれで構わないのです。

遺留分を行使(遺留分侵害額請求権)する場合は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時、又は相続開始の日から10年が経過した時は時効によって消滅します。

カテゴリ:相続について
2022.07.23

遺産が少ししかない場合は遺言書は必要ないのか?

相続についての相談を受ける中で、よく話題になるのが

「私には不動産もないし、貯金も少ししかないから遺す財産はない。だから私が死んでも子ども達が遺産について揉めるなんて考えられません。」

というお話です。

結論から申し上げますと、遺産分割で遺された相続人が揉めないという事はあまり聞いたことがありません。

これは、遺された相続人が仲が悪いとか、いい人でないからとかの話ではなく、人間の心理の仕組みからそうなってしまうものと思われます。

例えば、自分が汗水流して一生懸命に働いた対価として100万円のお給料が手に入ったとします。借金などなく、その100万円は自由に好きなように使えるお金だとします。その100万円から500円の牛丼を友達にご馳走するくらい、何ともないことだと思います。
では、道を歩いていて500円が目の前に落ちていたとします。その500円を拾おうとしたら、いきなり横から友達がサッと自分より先にその500円を拾ってしまったとします。500円は決して大金ではないのにムッとしませんか?(もちろん、その500円はきちんと警察に届けなければなりません)

そうなのです。自分が何かの対価的なものとしてお金が手に入るのと、そうでない場合では、金額の多い少ない関係なしに、人間は人格が変わってしまうのです。

それを相続に置き換えた場合、その争いを防ぐ方法があります。

「遺言書の作成」です。

親の最後の責任として、相続人が争わない為にも法律に則った遺言書を作成しておくことはとても、とても大切ことなのです。

そしてもう一つ大切なことがあります。

遺言書は、遺言者よりも受遺者(遺言で遺産を受ける人)の方が先にお亡くなりになると(同時死亡も含みます)、その遺言は無効になってしまいます。受遺者の相続人にその遺言が相続されるわけではございません。ですので、そうなった場合に備えて、第2、3順位の受遺者を指定しておくことも遺言書の内容としては多く見られます。


(個人的には遺言書がなくても相続人の方達が争うことなく遺産分割をして、平和に暮らせる日が来ることを心より願ってます。)


カテゴリ:相続について
2022.07.22

遺された預貯金の払い戻しについて

お亡くなりになられた方が遺された預貯金はどうなるのでしょうか?
金融機関は相続が発生したことを知った時点で被相続人名義の預貯金を凍結します。
預貯金は遺産分割の対象であり、複数の相続人がいる場合、遺産分割が確定するまでは相続人単独での払戻しができないようにするためです。
なので、原則遺産分割協議が成立するまで相続人は預貯金を引き出すことはできません。
しかし、どうしても相続財産である預貯金を相続人が緊急に使わなければならないこともあると思います。
例えば、亡くなられた方の葬儀費用や相続人の生活費などです。
そのような場合は、遺産分割前に各相続人が相続財産である預貯金の一部を引き出せる制度があります。

その根拠は民法909条の2にあります。
「各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の預貯金債権の3分の1に権利行使者の法定相続分を乗じた額について、金融機関ごとに150万円を限度として、単独で払い戻しを求めること」
かできます。

ポイントは
「金融機関ごとに150万円を限度として」
です。なので、A銀行、B銀行に各300万円の遺産があれば、A銀行から最大150万円、B銀行から最大150万円を引き出すことが可能です。

例をあげます。
夫がお亡くなりになり、妻と子2人の計3名が相続人です。妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は各4分の1です。この時、夫の遺産としてA銀行に600万円、B銀行に1200万円があるとします。
妻と子2人で遺産分割協議がなかなかまとまりません。
この場合、妻は単独でA銀行から100万円(600万円×(2分の1×3分の1)、B銀行から150万円(1200万円×(2分の1×3分の1)=200万円。150万円を超えているので150万円となる)引き出すことができます。

この場合、妻が引き出した金額は遺産の一部の分割により取得したものとみなされます。



カテゴリ:相続について
2022.07.21

胎児は相続人になれるのか?

結論から申し上げますと、胎児も相続人になれます。
妻が懐胎中に夫が死亡した場合などです。

しかし、この場合、妻は胎児を代理して遺産分割協議をするといったことはできません。

亡くなられた夫の不動産の相続登記をする場合は、妻と胎児で持分2分の1ずつ(他に子がいない場合)で登記を申請することになります。

このとき、登記を申請する際の胎児の住所の記載は妻(母親)の住所を記載します。
なお、懐胎証明書等の妻が懐胎している証明書等の添付は不要です。
カテゴリ:相続について