竹田司法書士社会保険労務士事務所

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新着情報

2022.07.29

前回の続き

さて、相続が起こった時の相続登記の重要性は前回のブログに記載致しました。→こちらです

前回は子Aが遺産分割協議により法定相続分よりも多い不動産の持分を取得した場合でしたが、今回は子Bが相続放棄をしたことにより子Aの持分が増えた(遺された土地が全て子Aのものになった)場合を考えてみましょう。

子Bが相続放棄をしたことにより、遺産の不動産は全て子Aのものになりました。にも関わらず子Bが子Bの友人Cに子Aが相続した不動産を売ってしまった場合です。この場合、前回と同じように子Aは法定相続分である持分4分の1しか主張できないのでしょうか?

いいえ、今回は子Aは相続した不動産全てについての所有権を子Bの友人Cに主張できます。

子Aに登記が無くてもです。

なぜかと言いますと、相続放棄には絶対的な効力があり、子Bは相続放棄をした時点で遺産の土地については無権利者になります。その無権利者から土地を買ったCもまた、無権利者です。

無権利者には登記がなくても所有権の主張ができ、対抗できます。

別の視点から見ると、相続放棄には絶対的な効力があるから、お亡くなりになられた方に莫大な借金があっても、相続放棄をすれば、相続人はその借金を相続することなく、借金の返済をする義務は無くなるのです。
カテゴリ:相続について
2022.07.28

相続登記をしなかった場合に起こること

相続が起こった場合、不動産の相続登記をするといった認識は日本国民の全ての方々がお持ちになられているわけではございません。
だからこそ、相続人が不明で所有者が不明である不動産がたくさん存在することが問題視されているのです。

相続登記をしなかった場合の一例を見てみましょう。
登場人物は亡き夫X、妻Y、子A、子B、子Bの友人Cです。

夫Xが土地を遺し、お亡くなりになりました。相続人は妻Y、子A、子Bです。しかし、妻は子ども達に遺された土地を譲るために遺産分割協議で子Aと子Bに、

「私はこの土地はいらないから、お前たちで仲良く分けなさい。」

と言いました。すると子Bは、

「僕は弟だからお兄ちゃん(子Aのこと)に4分の3あげるよ!僕は4分の1だけでいいよ。」

と言ってめでたく遺産分割協議がまとまりました。しかし、子Bはなんと子Aに内緒で友人のCに土地を全部を売ってしまいました。

遺産分割協議で土地の持分はAが4分の3、Bが4分の1と決めたのですから、Bの行為はルール違反です。

Cはさっさと自分名義の土地の所有権移転の登記を済ませてしまいました(その前に亡夫Xから子Bへの所有権移転の登記が必要になります)。そこで怒ったのは子Aです。自分がてっきり残された土地の4分の3を所有していると思っていたのに、勝手に子Bに、Bの友人Cに土地を全部売られた上に所有権移転の登記までされてしまったのですから。

子AはCに言いました。

「その土地は4分の3は俺のものだ。全部自分のものだと思うなよ!」

常識に考えて子Aの主張は正しいですよね。しかし、法律的にはどうなのでしょうか。

答えは、子AはCに対して法定相続分である持分4分の1しか主張できません

遺産分割協議や遺言などで、本来の法定相続分よりも多く相続したとしても、登記なくして第三者に対して主張できるのは法定相続分だけなのです。
ですので、子Aは遺産分割協議が成立した時点ですぐに持分4分の3の所有権移転登記を申請するべきでした(もちろん子Aは、子Bに対して訴訟などの手段を用いて損害賠償等を請求することは可能です)。

相続に限らず、不動産の所有権が移転した場合、登記をすぐに申請することをお勧めします。

実態と異なる登記が存在することは、トラブルの原因にもなりかねません。
カテゴリ:相続について
2022.07.25

相続人でない人が、相続財産を占有している場合

相続が起こった場合、まず最初にしなければならないことは相続人を確定するすることであり、相続人を確定することはとても重要であることは前の記事に書きました。

しかし、相続人を確定する作業はとても大変であることも前の記事に書きました。

相続登記の為に最初にすること


相続人になれる資格は①配偶者、子②直系尊属③兄弟姉妹ですが、代襲相続や遺留分、特別受益、欠格事由、排除、相続放棄などが絡んできた場合は相続人を確定し、その持分の確定をする作業はどんどん複雑になってきます。

そのようなことから、本来は相続人ではないのに相続人として相続財産を占有している人が居たらどうなるでしょうか。

例えば、夫、妻、子、夫の母の4人が親族で一つ屋根の下で生活していたとします。この場合で夫が亡くなってしまいました。遺した財産は貯金の100万円のみです。相続の仕組みを知らなければ、夫の母は「私も相続人であるのだから、息子が遺した100万円のうち、いくらか相続する権利があるはずだ」と主張してきても不思議ではありません。亡くなった夫の実の母親なのですから。しかし、法律はそうはいきません。この場合、相続人は妻と子の2人です。しかし、実際の話、妻と子が、夫の母も相続人だと思い込んで、話し合いで夫の母に100万円全額渡すかもしれません。本当に心から妻と子が、夫の母にはお世話になっているから夫の遺産の全額100万円を夫の母に渡したいのであれば、妻も子も相続放棄をするか、妻も子も夫の母に対して相続分の贈与をするべきです。

しかし、夫の母も相続人であると勘違いして、しぶしぶ夫の遺産である100万円を夫の母に100万円渡したとします。そして妻はとても生活が苦しくなり、どうして良いかわからなくなって町の無料法律相談に行きました。

「最近夫が亡くなって、とても生活がくるしくなってしまい、どうしたらよいか分からなくなって相談に来ました」
司法書士
「なるほど。お亡くなりになられた夫には遺産はなかったのでしょうか?」

「遺産は100万円の貯金があったのですが、全て夫の母が相続しました。」
司法書士
「と言いますと、お子様はいらっしゃらなかったのでしょうか?」

「いいえ。子どもは1人います。」
司法書士
「それならば、夫の母は相続人にはなりませんよ。相続人は妻と子の2人だけです。」

「え?そうなんですか!?でも、すでに夫の母に100万円渡してしまいました・・・」
司法書士
「大丈夫ですよ。相続回復請求権を行使すればいいんです。」

相続回復請求権とは自分に相続権がないのに相続権があると純粋に思い込んでいる人(善意かつ無過失)に対して行使できます。この例では妻と子は、夫の母に100万円を返還するように言えるのです。ただし、相続回復請求権には行使しなければ消滅してしまう期間があります。それは、
①相続人又は法定代理人が相続権を侵害された事実を知った日から5年
②相続開始の時から20年
です。

では、夫の母が実は自分には相続権がないと知っていた上でそれを知らないふりをして相続人になりすましていた場合はどうなるのでしょうか。
この場合、相続回復請求権が消滅することはございません。
妻と子は、所有権に基づいて、夫の母に返還請求権を行使できるからです(所有権は消滅時効にかかりません)。

※この例ではわかりやすく説明するために夫の母が悪者みたくなってしまいました。申し訳ございません。
カテゴリ:相続について